私の王子はすぐそこに。
夕川懍
「あ、の…金澤くん??」

「どうしたの??
あ、それと、夏暉でいいよ」

「それじゃあ…夏暉くん??」


私が「夏暉」と呼ぶと、
彼は本当に嬉しそうに笑って
それでよし、と言って、少し照れた。


「改めて、どうしたの??」

「その、さっきの
『まだわからない??』って
どういうことかなって、」


すると夏暉くんは目を大きく開いて、
またころっと表情を変えて、はにかむと


「それは、ここで言った方がいいかな」

「え、どういう意味??」


まだよくわからない私に、夏暉くんは
後ろ髪を掻いた。
困ったような、照れたような表情だった。

それから急に肩を寄せられて、
揺れる電車でバランスを崩しそうで
焦っていると


「耳、貸して??」


小さな声で囁かれた。
私も小さく頷くと、


「俺、薗部さんのこと──」

──揺れる車体にご注意ください。


アナウンスが流れて…、引き剥がされた。


「薗部さん、大丈夫!?」

「だ、大丈夫だよ…」


私も夏暉くんも、
安心して手すりを掴み直して
改めて話そうと思ったけど、
そうもいかなかった。


「ハ〜ル〜ちゃ〜ん♡」

「きゃあ!!」


背後から抱き着かれて振り向くと、
幼馴染みの夕川懍(ゆうかわりん)。
相変わらず可愛くて女の子みたいだ。


「ハルちゃん可愛いなあ、ふふ♡
あれ〜、はじめまして??」


懍ちゃんは夏暉くんをみると、
挨拶をして私から離れ、
少し拗ねた表情をした。


「僕が知らないところで
王子様見つけたの?」


内緒話でそんなことを呟かれて、
私はぶんぶんと頭を振った。
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