ラストボーイ
-愁side-






「駅前にねっ新しくクレープ屋さん出来たんだって!礼ちゃんと行くんだけど、愁ちゃんも勇志くんも一緒に行くよっ!」







その日の芽生はやたらテンションが高かった。



駅前に新しい店が出来たそうで。



行こう?じゃなくて強制だもんな。



芽生が甘党なのは知ってたし、
目をキラキラさせながら俺と勇志を交互に見るもんだから、
本当はクレープなんか食いたくなかったんだけど、
芽生が喜ぶんならって思って行く事にした。







「今日、英語の授業で読めって言うから読んだら先生だんまりしちゃってさ~。」





俺は帰国子女。


向こうにいる間は英会話だし、
発音がネイティブ過ぎたのか先生を黙らせてしまった。







「愁ちゃんペラペラだもんねっ♪あっ!あった!早く早くっ!」






急がなくても店は逃げやしねーよ。。






店の行列は大半が俺らと同じ制服の生徒で、
芽生はメニューを見ながらにやにやしてたけど、
多分勇志もこれ待つの?って思ったと思う。






「あ。」






ん?先輩?勇志の部活の先輩かなんかか。



最初はそう思った。



でも勇志の声で反応した芽生の顔は青ざめてて、
顔を上げない芽生を見て普通じゃないとわかった。






「芽生?」






俺の声にも肩をびくつかせる芽生。



あいつがどうかしたのか・・・?



するとそいつは芽生に歩み寄り、
肩に手を置いて耳元で言ったんだ。






芽生の指先が震えてるのが分かって、
俺が聞こうとした時には芽生は全速力でその場から走ってた。







なんなんだよ。


つかあいつ誰だよ。







「愁。実は・・・さ、昨日芽生ちゃんお前の事待ってたろ?教室で」







確かに待たせた。

でもそれと何の関係があるんだよ。







「そしたら先輩が芽生ちゃんに話があるってんで芽生ちゃんあいつと話したんだ。」






やっぱりさっきのは先輩だったらしい。






「俺も一緒に行こうとしたんだけど、芽生ちゃん大丈夫って言うから行かせんだ。でも塚田って女ったらしで有名で心配だから俺行ったんだよ。」






俺の頭の中でひとつずつひとつずつ何かが繋がっていく。








「そしたらあいつ芽生ちゃんの腕掴んでてさ、もちろん抵抗はしてたんだけど、どうも芽生ちゃんを狙ってたらしい。手首の怪我はそれ。ごめん、話すべきだったわ。でも愁と礼ちゃんに心配かけたくないって言うからさ。」








"これちょっと火傷したのっ"







俺の中にあった疑問が、
勇志の話した事と全て繋がった。








「芽生・・・大丈夫かな?あたし探す!」






「わり、お前らここいて。戻ってくるかもしれねーし。俺探してくるわ。」








"最近ママの手伝いをちょっとね!"








なんで俺に言わねーんだよ。




何で昔っから独りで抱えんだよ。







俺はただ芽生が行きそうな場所をひたすら探した。






止まる事なくただひたすら走った。








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