イジワル同期とルームシェア!?
「プラス思考、プラス思考。泣いてたら、足元しか見えないぞ。目の前にイケメン御曹司が通りかかっても見逃すぞ。次こそ、大士朗を超える優良物件を狙ってけ」


睨み続けるつもりだったのに、思わずふっと笑ってしまった。
なんか、このやりとりの馬鹿らしさに気づいたら、ラクになってしまった。すごく癪だけど。
泣いたこともあって、妙にスッキリしたというか。

私は睨むのをやめ、薄く微笑みを作った。


「御曹司はもうコリゴリ。やめとく」


「ん……そうか」


「でも、恋愛は、次は当たりを引けるようにガンバろっかな」


私が笑うと元希も笑った。
爽やかで、ちょっとだけカッコいい笑顔だった。


「そうそう、笑ってろ。アヤは笑ってる顔が一番イイ女に見えるよ」


あんたもね。
笑ってると、爽やかでカッコいいよ。


その後、元希は仕事に戻り、私は元希のオゴリということで新橋駅近くの『醍醐』でごはんとビールで夕食にし、帰ったのだった。

緊張と切なさで埋まっていた胸は、つかえがとれたみたいにラク。
元希の作戦はある意味大成功だと思う。

キスのことだけが、いつまでも頭に引っかかっていた。



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