イジワル同期とルームシェア!?
でも、涼子の言うことは当たっている。

田中部長みたいな日和見弱虫おじさんに、ご家族を捨てる気概はないと思う。
今、ちょっといい想いができるから、三谷さんと付き合ってるだけ。
そんなのは、元祖都合のいい女の私にだってわかる。

それにしても“すだれハゲ”は言いすぎです、涼子サン。

絶賛都合のいい女中の三谷さんは、顔を真っ赤にして怒り心頭といった様子。

その口からどんな怒声が飛び出すかと思いきや、見る間に三谷さんは崩折れた。
テーブルに突っ伏して、おいおいと泣き出すじゃないの。

成人女性の号泣に、店内は凍りつく。

さすがに他のお客さんの目が痛く、店員さんも「どうかされましたか!?」なんて飛んできちゃって、私と涼子は泣きじゃくる三谷さんを引きずるようにカフェを出た。


「涼子、言い過ぎ」


三谷さんを引っ張って、ビルの谷間のベンチスペースに腰掛けさせた。日が当たらない場所なので、涼しい夕方のビル風が吹き抜けていく。


「不倫なんかやめろって言いたかっただけだもん」


涼子は口を尖らせる。涼子の言い分はよくわかる。正しい。

でも、正論で傷つく人はいる。

間違っていても、騙されていても、貫きたいことがある人はいる。

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