イジワル同期とルームシェア!?
「古町さん……っと……」


頭を下げた私に、毬絵さんが声をかけた。
正確には声をかけようとして、押し留まったといった感じ。

なんだろう。
私が毬絵さんの顔を窺うと、彼女は困ったように笑った。


「なんでもないの。テーブル用の消毒薬をついでに持って行ってもらおうかと思ったんだけど、さっき別な用事で戻ってきたコに頼んだったわ。いやあね、私ったら」


「あ、そうですか」


「ホント、ボケてるわね。ごめんなさい」


ふんわりと照れ笑いする毬絵さん。
毬絵さんでも勘違いや間違いなんてあるんだなぁ。
可愛らしい年上の女性に再び頭を下げ、私はエレベーターホールに向かう。

結局、毬絵さんと元希の関係性の疑問は解けないままだったなと思う。

ま、いっか。
もう、元希とは関係ないし。

エレベーターの上ボタンを押し、やってきた一基に乗り込む。

7階のボタンを押して思い出した。
そういえば、7階の大会議室は元希と大士朗へのドッキリを、仕掛けた場所だ。

あれ以来だな。
あんな恥ずかしいドッキリ、もう生涯することはないだろう。

1ヶ月前の出来事がひどく昔のことに思えた。
< 243 / 323 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop