イジワル同期とルームシェア!?
私が答えずにいるせいか、元希はもっとうまい例え話を模索中。


『えーとRPGで言えば、俺が勇者で、剣士とか格闘家とかのアクティブ系のジョブな?ブンは白魔道士として、脇からばんばか回復魔法を使いまくり……』


『あはは、ごめん、そっちの方がよくわかんないや。でも、青海くんの言いたいこと、なんか伝わった』


私が笑ったせいか、元希の表情がぱっと明るくなったのを覚えている。


『それじゃ、今後もひとつ、末永くよろしく』


『うん、よろしく。私なりに精一杯を出せるように頑張るよ』


あのささやかな瞬間は、その後も私の社会人生活を支えてくれた。

研修が終わり、物流部に配属され、青海元希と交わした言葉の内容自体は長らく思い出さずにいた。けれど、言葉の持つ決意の感情だけが私の胸にはあった。

私はこの部署のメインではない。だけど、私のサポートがあるから、みんなが円滑に働ける。

私の働く意義を作ってくれたのは、他ならぬ元希だったのだ。

そんなこと、一緒に暮らしている時は思い出さなかった。
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