愛しています

読み終えた頃には涙で周りは見えなかった。

「子供の名前、優斗とあたしの名前からもらって優美にしよう!」
「この子には優斗みたいに優しくて強くて、可愛い子になってほしいな」
「でも優斗みたいに心配性すぎたり優柔不断なとこは似てほしくない!」

子供の話をする彼女の笑顔を思い出すとさらに涙が溢れる。
隣で寝ている優美を見て、どうしようもない感情になる。
そしてまだ目の前にいる彼女の両親に向かって口を開く。

「あの時この俺が真美を選んでいれば…
確かにお二人や俺の両親からすればこの子は初孫です。
でもこの子ではなく真美の命を助けておけば」

パシンッ!!

全てを言い終える前に彼女の母親の平手打ちが左頬に飛んできた。
手をおろした義母は微笑んでいた。

「それでも真美は戻ってこないのよ。
真美はあなたとの子の幸せを願ったの。
父親でしょう?真美との子でしょう?
この子を選ばなければよかったなんて思わないで。真美が命懸けで助けたこの子を大切にして。」

言い終えた義母からは笑みが消え、目には涙が溜まっていた。

「はいっ…」

そう言って優美を抱き締めた。

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