猫系男子の甘い誘惑
(いや、悪くはないんだけど……)

 今までの自分なら、紺のドレスは手に取らなかっただろうと思う。佑真のすすめに従うのはしゃくだったけれど、紺の方をレンタルすることに決めた。

「ええっ、倫子さん見せてくれないの? 俺、せっかくここまでついてきたのに」

 元の服に着替えて外に出ると、待っていた佑真はあからさまにつまらなそうな声を上げた。

「何であなたに見せなきゃいけないの? 佑真が選んでくれた方にしたんだから、それでいいじゃない」
「まあ、いいけどさ。俺も当日行くし」

 佑真は敦樹の大学時代の後輩だ。だから、友人枠で参加することになっているらしい。披露宴の会場で佑真と顔を合わせるとなると、心強いような気がした。

(……心強いなんて、言うつもりはないけどね)

「じゃあ、今日、あとは俺に付き合ってもらうよ?」

 レンタルしたものは、配達してもらえるように手配してから店を出る。どこに連れて行くつもりなのか知らないが、佑真は嬉しそうに倫子の手を引っ張った。
< 34 / 59 >

この作品をシェア

pagetop