猫系男子の甘い誘惑
 片手に引き出物の紙袋、もう片方の手にドレスのケースを持ち、肩からショルダーバッグをさげている倫子の方へ近づいてきた佑真は、さっとドレスのケースを奪った。

「これ、返しに行くんでしょ。付き合うから――二次会、してよ。お疲れ様会。俺、頑張ったと思わない?」
「……それはどうかと思うんだけど」

 なんて可愛くない返事をしたけれど、今日を無事に乗り切ることができたのは、佑真の力に寄るところも大きかった。となれば、飲み代ぐらいは出すべきだろうと自分に言い訳をして、今日だけは素直になることに決める。

 ドレスを借りた店までは、地下鉄で二駅。

(……なんで、緊張しているんだろうな)

 今日までのことをいろいろ思い返してみても、上手な言葉が出てこない。倫子が居心地悪く感じているのとは反対に、佑真はいつもとまったく変わらない雰囲気だった。

「披露宴であれだけ食べたあとだから、ご飯はいらないよね? じゃあ、飲めるところがいいかなあ。披露宴でたくさん飲んだ?」
「飲んでない……さすがに同じ失敗は繰り返したくないから」
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