夏祭りの恋物語(3)~かき氷の誘惑~
「何の用?」

 鉄板に残った焦げをコテでこすり落としながら無愛想に言う私に、章太郎がへらっと笑って言う。

「タマちゃん、一緒に夏祭り行こうよ」
「無理」
「なんでさ。小さい頃はよく一緒に行ったのに」

 小さい頃って小学校低学年の頃の話でしょ。

 私はイラッとして言う。

「だーかーらー! 見てわかんないの? 今日は店を手伝わなくちゃいけないから、お祭りには行けないの!」
「ちょっとくらい抜けられないの? 去年も一緒に行けなかったんだから、今年は行こうよ」

 章太郎が不満そうに言った。私は小さくため息をつく。

 そもそも章太郎が私を誘う理由がわからない。幼馴染みで家も近いから今でもこうして普通に話しているけど、高校生のときにぐんと背が伸びた章太郎は、その外見と調子の良さから、大学でもよくモテている。講義にも出ないで学食で女の子を侍らせているから、何度か腕を引っ張って無理矢理講義室に連れ込んだことがあるくらいだ。昔からお調子者だった章太郎だけど、ここ最近、その行動が目に余る。ついうるさく言ってしまって、章太郎の取り巻きの女子グループに「幼馴染みだからって、これ以上章太郎くんに付きまとわないで」って文句を言われたことが何度かある。
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