No one can replace 『貴方の代わりには、誰もなれない。』
圭吾自身は、幸せを感じていた。

入院する前には、彩乃に手料理を作って
もらったことはなかったが、
今は、毎回作って持って来てくれて
とても美味しくて、
圭吾は、とても嬉しかった。

父からの話しだったが、
素敵な女性と出会えた
と、圭吾は本当に喜んでいた。


一方 紗綾乃は、
毎日自分が病院に訪れるのを
待ちわびてくれる圭吾に
嬉しさを感じていた。

本当に紗綾乃自身を待ってくれてると
錯覚するほどに。
「おはよう、彩乃。
遅かったね、待ちわびたよ。」とか
「彩乃、明日は何時にくる?
帰りは、ゆっくりでいいんだよね。」とか

でも、圭吾に
彩乃、彩乃と呼ばれる度に‥‥
胸が苦しくなる‥‥
圭吾が、
待っているのも
好きなのも・・・私ではない。

決して勘違いをしてはいけない
と····何度も·····
何度も···自分にいいきかせていた。

所詮 自分は、彩乃の身代わり‥‥
圭吾は、彩乃を愛しているのだから‥
辛くても、彩乃が帰るまでは頑張るしかない
そう思う、紗綾乃だった。

圭吾のケガから、一ヶ月過ぎた頃
圭吾の手と足の固定が外れる事になり
圭吾のリハビリがはじまった。

圭吾は、彩乃が病院に来なくなるのでは?
ご飯も食べさせてもらえなくなる
と、寂しく思っていた。

一方・・・・
紗綾乃は圭吾とこれ以上一緒にいたら
ますます好きになっしまう。
と、考えて‥‥‥‥
気持ちを切り替える為にも
「固定も外れたから
明日からは、少しゆっくりくるね。」
と、伝えた。

圭吾は、寂しそうにして‥‥
「彩乃、僕のそばにきて、
僕に顔をみせて」
と、圭吾は見えないのだが
彩乃に触れたかったのだ。

紗綾乃が、圭吾の近くに行くと
圭吾は、両手で紗綾乃の頬をとらえて
紗綾乃の唇に自分の唇をあてた。

紗綾乃は、びっくりして

圭吾の体を押してしまい‥
圭吾は、
「彩乃?」と

紗綾乃は、
「ごっ・・ごめんなさい‥・・・
びっくりして‥
今日はっ‥・・帰りますっ」
と、慌てて病室をでて

自分の口に手をあて
胸の動悸を抑えながら
涙を流していた。
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