明日はきっと晴れるから
靴箱前のすのこの上で上靴に履き替え、上り口に一歩足を踏み出すと、視界の端に結城くんの姿が映った。
結城くんは玄関の隅の壁に背をもたれて、立っていた。
左手に学生鞄、右手に文庫本を持ち、本を読みながら私を待ってくれていたみたい。
「結城くん、おはよう」
側に寄って声をかけると、彼は本に落としていた視線を私に向けた。
まっすぐにこっちを見る、その瞳にドキンとした。
いつも思うけど、結城くんの瞳は綺麗。
濁りのない黒い瞳。
黒いのに透明感を感じるし、強い意志を秘めているんじゃないかと思う輝きがある。
じっと見つめられると、吸い込まれてしまいそう……。
顔が勝手に赤くなってしまうのを自覚して、恥ずかしくなってしまった。
でも結城くんは私と違って、いつも通り。
「おはよう。朝から雨で蒸し暑いね」
そう話す声は淡々として、抑揚がやけに少ない。
きっと本人は微笑んでいるつもりなのだろうけど、口の端が微かに上がっているだけで、不思議なくらいに表情が乏しいのもいつも通り。
最初は彼の気持ちがわかりにくくて戸惑ったけど、今はそんな結城くんの側にいるのが心地いい……。