明日はきっと晴れるから



色々あって、私はもう私じゃなく、別の人間になってしまった気がしていた。


自分を見失っていた私をここに連れてきて、結城くんが伝えたかったのは、かつての私が幼い彼に向けて言った言葉と同じもの。


私は私。

名字が変わっても、私。

うじうじ悩んだりはっきり意見を言えないのも、私。

本が大好きで、昔も今も物語の世界に夢中になってしまうのも、私。



誰にヒソヒソ言われようとも、私と言う人間が変わったわけじゃない。


白い目で見られようとも私は悪い事するような人間じゃないから、胸を張って生きていけばいい。



私の手を握りしめる結城くんの手に、力が込められた。



「菜乃花は昔も今も、素敵な女の子だ。
君は君らしく、そのままでいいんだよ。

やまない雨はない。

昔の俺の心はいつも雨の中にいたけど、菜乃花に出会って自分を見つけてからは、すっかり雨はやんでいる。

菜乃花の雨も、絶対にやむから大丈夫だよ。
君が望んでくれるなら、俺はずっと側にいるから。

菜乃花、自信を持って。前を向いて。明日はきっと、晴れるから」



「結城くん……」



何度も頷いて、涙をポロポロとこぼした。


夏休みから辛いことがいっぱいあって、心の中はいつも雨。


でも、その雨は晴れる。

明日はきっと晴れる。


そう信じて生きていけばいいんだよね、結城くん……。



結城くんが笑ってくれた。


口の端がちょっとだけ上向きになり、切れ長の二重の瞳が優しく弧を描く。


笑顔が苦手なのは今も変わらないみたいだけど、ゆきちゃんだった昔よりずっと上手に笑えていると思った。



自分って何だろうって、昔は結城くんが悩んで、今は私が悩んで、お互いに教えあったなんておかしいよね。


おかしいけど、嬉しい。


結城と一緒なら、強く前に進めそうな気がしてきたよーーーー。




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