あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
 朝っぱらからやめてほしい。
 愛の告白ならば会社以外の場所でやってもらわないと、周りが困ってしまう。

 そのまま私は給湯室へあわてて駆け込んで、冷蔵庫の中の麦茶をコップについで一気飲みした。

 息を整えつつも、先ほどの架くんの言葉が脳内でリフレインする。
 思い返してみれば、声音もいつもより甘さが乗っていたような……

 なにげなくふとシンクの中を見てみると、無造作にグラスがふたつ置かれてあった。
 誰かが使ったグラスをそのまま放置したのだと気づき、私はスポンジを手に取ってそれをやみくもに洗い始めた。

 社長と架くんは社内でいろいろ噂はあったけれど、まだはっきりとした恋人関係でななかった。だけど私が聞いたのは“告白”そのものだ。


 社長が架くんを社員にしたのは、今までは恋人未満の微妙な関係だったとしても、自分のそばに置いておきたかったのだ。

 そして、いつか自分の恋人にしたい。
 そんなふうに考えていたから、架くんにはよそで彼女を作らないように釘を刺していたのだろうか。
 だとしたら、ついに社長は架くんの心を手に入れたのだ。
 
 だけど、それならばなぜ社長は最初に『ダメよ』と断るような発言をしていたのだろう?
 そこだけが謎だが、あれやこれやと勝手な想像ばかりしてはいけない。
 私は頭をふるふると振って思考を停止させた。

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