若輩者
初恋、そして再会


初恋は誰だったか。幼稚園の先生なり同級生なり幼なじみなりいろいろあるけれど、俺の場合は幼稚園から通っていた水泳のコーチだった。自分の親より年上のコーチが多い中、そのコーチだけが特別若かったから好きだったのかもしれない。でもあれは確実に初恋だった。コーチの気を引くためにいっぱい話しかけたし、いい子のフリもした。俺があのコーチに教わったのは5歳の頃だしほんの数ヶ月のことだけど、あの頃のことは今でも鮮明に覚えている。

いつだったか、大学の仲間に言われたことがある。「お前は付き合う女が似ているな、しっかりしてそうなのにどこか抜けてて守ってあげたくなるようなやつばっかりだ」と。それは自覚しているし、彼女を引きずって似たような女性を選んでいることもわかっている。名前も覚えてない彼女のことはこれから先も忘れられないだろう。


こんな昔のことを仲間と出かけてるのに思い出してしまうのは、今朝の夢に彼女が出てきたからか。


「ボク、ママはどうしたの?」

ふと聞こえてきた声に足がとまる。この声は…!振り返ればあの頃と何も変わらない彼女の姿。幻想かと思った。でもあれは彼女だ!仲間の声など聞こえず、彼女のほうに向かって走り出す。このチャンスを逃すものか!人混みをかき分け進む間に迷子は母親と合流でき、彼女も歩き始めようとしていた。

「コーチ!!!」

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