傷む彼女と、痛まない僕。
「あの子に『学校には言わないで欲しい』って何度も頭下げられたよ。 黙っている代わりに約束してもらった。 『金輪際うちの息子には関わらない』って」
僕の承諾もなく、僕から吉野さんを引き離した父親の隣で『友達はしっかり選びなさい』と母親も同調していた。
どうしてこの2人は、僕を扶けてくれた吉野さんを、僕の世界から排除しようとするのだろう。
アリ圧砕するし、オヤジから金貰ってるのかもしれないけど、吉野さんの事殆ど知らないけど、それでも僕は、吉野さんが優しい人にしか見えないんだ。
「・・・関わるよ。 吉野さんにタクシー代返さないと。 吉野さんが僕をタクシーに乗せてここに連れて来てくれたんだよ。 吉野さんがオヤジから貰ったお金で、僕はタクシーに乗れた」
両親と一緒に帰りたくなくて『僕、電車で帰るから』と2人の隣を通り過ぎようとした時、