傷む彼女と、痛まない僕。
 
 僕だって知っているんだよ。吉野さんのバイトの事。 そんな意地悪な意味が篭った言葉を吉野さんに投げかけると、吉野さんは振り返り、唇を噛みながら僕を睨みつけた。

 その目には、薄っすら涙が滲んでいて、彼女の両手は、悔しそうにスカートをきつく握り締めていた。

 しまったと思った。 言わなければ良かったと思った。

 言ってしまった言葉を取り戻す事が出来ればいいのに。
 
 吉野さんがあんなに追い詰められた表情をするなら、言うべきではなかったんだ。


 「・・・・・・口止めって・・・何??」

 唯ならぬ吉野さんと僕の空気を悟って、小山くんが僕の顔を見上げた。
< 74 / 210 >

この作品をシェア

pagetop