100%初恋
第2話 健太
夕日が差す庭に子どもたちの声が響く。ここは俺が通ってる保育園の庭だ。遊びながらお迎えを待つ子どもたちの様子を、俺はジャングルジムの上から見ていた。

門を通って来た母親を見つけた俺は、慌てて地上に戻り、通園バッグを取りに教室に入った。

教室では積み木とかで遊ぶ同じ組のヤツら。 ヤツらとは離れた隅の椅子に座って絵本を読むオンナと、並んで座ってる大人の男。時々オンナが話しかけ、男は笑顔で答えてる。

その男・ヒロ先生は、俺たちがそら組だった時に、この保育園にやって来た。

学校を卒業して、保育園の先生になったばかり。オンナの先生ではしてくれない遊びをしてくれるし、従兄の兄ちゃんより年上で、父さんより若いヒロ先生は、すぐ俺たち園児の人気者になった。

園児だけじゃない。母さんたちも「モデルみたい」だとか、「戦隊ヒーローのレッドに似てる」とか、はしゃいでた。

オンナの先生たちも、用もなのに俺たちの教室に来たりする。

そのヒロ先生を独り占めしてるのが、あのオンナだ。そら組の時はヒロ先生を見て泣いてたのに、いつの間にか一緒にいることが多くなってた。

……気に入らない。

朝でも、昼でも、夕方でもよく見かける2人の姿。とにかく気に入らなかった。通園バッグを持った俺は、2人に向かって駆け出し、広い背中に体をぶつけた。

「ヒロ先生ー、母さん来た!」
「そうか、健太、また明日。気をつけて帰れよ」
「うん!」

ヒロ先生の背中越しにオンナを見ると、俺とヒロ先生には目もくれず立ち上がり、絵本を片づけて駆け出していた。

「おかーさーん!」
「遅くなってゴメンね。先生に挨拶して来なさい」
「はーい。ヒロ先生、さよなら!」

立ち上がったヒロ先生がオンナと、オンナの母親に近づいたから、俺もつられて一緒に歩いた。

「さよなら、りんちゃん。また明日」

腰を屈めてオンナの頭に置いたヒロ先生の手が離れると、こっちを向いたオンナと目が合った。

「健ちゃん、バイバイ」
「おぉ、バイ、バイ」

手を振ったオンナの笑顔に、自分の顔が熱くなったのを感じた。

気に入らない。でも気になる。

卒園までそんな気持ちが続いた。

そして小学校に入学。それほど広くない地域の小学校には、2つの保育園と1つの幼稚園の卒園生が入学する。3分の1は知った顔だ。

知った顔の中に、あのオンナがいないと分かった時、初めて自分が彼女のことを好きなことに気づいた。

しかし学校生活と新しい友だちに囲まれて過ごすうちに、彼女のことは記憶から消えた。
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