秘色色(ひそくいろ)クーデター

o
*


.

.


 窓の外には青空。牢屋から外を見る人はみんなこんな気分なんだろうか……。
 はるか遠くにあるような、そんな気がする。


「あー……もう! めんどくせえ!!」


 ガターン、と後ろから大きな音が響いて、恐る恐る振り返った。

 一番後ろの席で、浜岸先輩が机に足を乗せて眉間にしわを寄せている。舌打ちを何度もしながら目を閉じていた。


「ちょっともぉー、ほんっと大きな音出すしかできないのぉ。後輩がびびってんじゃないのぉー」

「うっせえなあー。しかたねえだろ、だりいんだよ!」

「す、すみません……」


 舌打ちとともに吐き出された悪態に、体を縮こませて謝罪を口にすると、慌てた様子で「ちげーって! おまえのせいじゃねえって! なに謝ってんだお前!」と怒られているのかフォローされているのかわからない口調で言われた。


 夏休み3日目。
 土日をすごして、月曜日の今日。


 クーデターを起こそうとした私たちは生徒指導室に閉じ込められている。もちろん、会長も。

 七瀬先輩だけはそのとき放送室にいたおかげで仲間だと思われていないらしい。みんなもあえて口には出さなかった。


 今頃放送室でみんなが終わるのを待っているんだろう。

 先輩は呼び出されていないのに。わざわざ来てくれた。さすがにひとり知らん顔して過ごすのは心苦しいのだろう。

 でも……羨ましい。放送室でのんびり好きな機械をいじっているのだろうか。


 目の前の机には、作文用紙が大量にある。いわゆる反省文というやつらしい。この前も書いたのに、もう一度書かされている。意味がわかんない。

 おまけに夏休みの間は毎日レポートを書かされ、毎週末提出することになっている。絵日記の宿題か!


 はあ、と、文字が全く埋まらない作文用紙を見つめながらため息を落とした。
 今更だけれど、これはやっぱり、私のせいだ。

 だって、あのとき、やめようかという雰囲気の中で"やりましょう"と口にしたの。

 もちろん私だけが悪いとは思ってないけれど、あのとき私がそう言わなければ、こうはなってなかったんじゃないかと思う。


 そのせいで今まで進路指導室と無縁だった先輩たちを。立森先輩や会長は受験生なのに!

< 144 / 151 >

この作品をシェア

pagetop