秘色色(ひそくいろ)クーデター

o
*


.

.


 美化委員会は、3時から。

 いつもよりゆっくり眠れるんだと思えば嬉しいけれど、みんなが休みのときになんで学校に行かなくちゃいけないんだ。

 昼前に起きて、のろのろと1階に降りていく。
 お父さんはすでに仕事に出かけたらしい。お母さんはリビングでテレビを見ていた。


「おはよ、お母さん」

「あ、おはよう。なにか食べる?」

「うん」


 お母さんはすぐに腰を上げてキッチンに向かい、代わりに私はリビングのソファに腰を下ろした。
 いつもは見ることのないワイドショーがテレビから流れている。

 ネットで炎上したらしい。理由はよくわかんないけど、コメンテーターが好き勝手言って相手を批判している。


「こういうのいじめだよねえ」


 そういう人たちが、"いじめをなくそう”なんて偉そうに言うんだから、よくわかんない。有名税だよ、とお父さんが言ってたけど、納得出来ない。

 先日まではちやほやされていたのに、些細な事が原因で会見して謝れだのなんだの。


「今日は家にいるの?」

「ううん、今日は呼び出しで学校にいく」

「呼び出し?」


 あ、しまった。
 お母さんの顔色が曇ったのに気づいて言葉足らずだったことを後悔する。


「美化委員会の呼び出し。夏休みまでの1週間、委員会のみんなで分担して掃除するの。その話し合い」

「あ、ああ、そう」


 まだちょっと疑っているのはわかったけれど、これ以上説明のしようがない。
 ……事細かに説明したら余計に怪しまれそうだしなあ。

 なにを言っても信じてもらえないんじゃないかと思うと話す気がなくなってくる。


「ご飯食べたら、学校行く」


 そう言って再びテレビを見つめた。
 委員会まで時間はあるけれど、家の中にいるのも息苦しそうだしさっさと出かけよう。

 出されたパスタを無言で口の中に放り込んで、そそくさと2階に戻る。そして手早く着替えてすぐに「行ってきます」と声を上げた。


 ドアを開けると、むっとした空気が私を襲う。

 ……まだ梅雨のはずなのに、空は真っ白な雲がひとつふたつ浮かんでいるだけのキレイな青空。

 蝉も嬉しいのか大合唱だ。鼓膜にこびりつきそうなほど叫ばなくても、と顔をしかめた。
< 15 / 151 >

この作品をシェア

pagetop