嫌いじゃない。
やばい。芹沢が……キレてる。
その冷めた目を見るのが怖くて、震える手を隠しながら外に出た。



喉の奥が熱くなってくる。


「先輩…俺、先輩の泣いてる顔はあまり見たくないよ」



「へ?」



自分の頬を冷たい何かがつたっていた。



また雨でも降り始めたんじゃないかと思ったけど、今日の空は雲がなく晴天だった。



そうでもないとしたら何?




私が泣いてるっていうの?



矢澤の温もりを肌で感じる。



「俺の胸貸してあげます」



「……っう…」




溜め込んでいたものを言葉と涙ではらした。



「あのね、私、芹沢とあの子が一緒にいるの見ると胸が凄くズキズキするんだぁっ…おかしいよね…」


芹沢は何も悪くないのに…ただ杏里ちゃんと話してただけなのに、私がムカついて八つ当たりしたんだ。最低だな。



私の背中を何も言わずにポンポンとあやしてくれる。



「先輩好きです。芹沢君よりもずっと。だから俺を選んで?」




「へ?」



「今度のデート…楽しみにしてます」
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