音ちゃんにお任せ



「大丈夫です、ちょっとびっくりしただけで・・・、私は大丈夫ですから」

「でも」

「本当に、大丈夫です。結斗くん・・・少し悩んでたみたいで、それで・・・きっと、それで動揺していたんだと思います」




そうだ。
結斗くんは彼女と別れたばかりで、傷ついてた。
だから、あんなことを。




「本当に、大丈夫なのか?」

「はい」

「だったら、こっち向いてくれ」

「・・・」




向けるわけない。
だって、私酷い顔をしている。
この顔を見られたら、気づかれてしまう。





「綾瀬」

「できませんっ」

「大丈夫じゃねぇってことだろ!」




一ノ瀬くんに腕を引かれ振り向かされる。
見えなかった一ノ瀬くんの姿が目の前に見えて。


私は一層涙をあふれさせた。




< 168 / 290 >

この作品をシェア

pagetop