レインボウ☆アイズ

心配

”俺のいいところは素直なところ”
祐子さんからアドバイスをもらってから、何度も自分に言い聞かせている。
その気持ちのまま、素直に咲葉さんとメールをしていたら
『はやく敦哉とイチャイチャしたい』と咲葉さんから返ってきた。
会いに行きたかったけど夜遅いので、早く朝が来てほしいと思いつつ眠ることにした。

「…おはようー。敦哉。」
金曜日の朝、ホームに来た咲葉さんは眠そうだった。
「おはよう…。もしかして、飲んじゃいました?」
咲葉さんは驚いて
『え?何も思ってないのに聞こえた?』
心の声で言う。
「聞こえなかったけど、眠そうだったから。」
そう言いながら、乗車待ちの列に並んだ。
「今日は送別会だから飲まないって、メールに書いてませんでしたっけ?」
「そう思うと、余計に飲みたくなるから不思議だよね…。」
咲葉さんは遠い目をして言った。
全然不思議じゃないです、と苦笑いしながら電車に乗ると
早速咲葉さんは、俺の腕で寝ようとしている。
…明日咲葉さんの家に行ったら、腕がおかしくなるくらい腕枕をして寝よう。
そう思って、にやけていると、咲葉さんと目が合った。
『敦哉、エロいこと考えてたでしょー。』
にやりと笑った咲葉さんの心の声が聞こえる。
俺は頷き、小声で言った。
「明日楽しみだなと思って。」
「私も…。」
咲葉さんはそう言って下を向き、寝るかと思ったがなかなか目を閉じない。
どうしたんだろう、と思って見ていると、咲葉さんは小さくため息をついた。
「咲葉さん。何かあった?」
俺が言うと
『今日も敦哉と寝たいと思って…』
咲葉さんの心の声が聞こえる。
思わず微笑んで頷いてしまう。
『我慢できないダメ女なんだよー』
久しぶりに咲葉さんの厳しい声を聞いた。
でも、そういうところも好きなんだけど…。
そう思うが、咲葉さんはまだ不満そうな顔をしている。
仕方がないので、咲葉さんの頭を俺の腕に倒し、髪を撫でて寝かせようとした。
でもやっぱり咲葉さんは不満そうに俺を見て
『そういうことされると、余計一緒にいたくなる…』
心の声で言う。
「でも、二次会も楽しみなんでしょ?」
俺の言葉に咲葉さんは頷いた。
二次会で行く店が楽しみだから、早く帰れないらしい。
きっとたくさん飲むんだろうな、と思って、ふと気づく。
二次会ってことは一次会もあるよな。何時間飲むつもりなんだろう…?
「咲葉さん、二次会って何時まで?」
「一次会が7時からだから、11時くらいかなー。」
…4時間、飲み続けるの?
ちょっと飲んだだけで咲葉さんはふらつくのに、4時間も飲んで帰ってこれるのかな…。
心配になっていると、降りる駅に着いた。
電車を降りて、俺はすぐに言った。
「咲葉さん、できるだけ飲み過ぎないように…あと、帰りも気をつけてください…。」
言いながら、あの夜道を一人でふらふらと歩く咲葉さんを思い浮かべる。
…心配だ。
「俺…駅で待ってます。帰るとき連絡ください。夜道が心配です。」
焦っている俺の顔を、咲葉さんは笑って見つめる。
『なんだか急に心配性になったなあ…』
「大丈夫だよ。金曜日はよく飲んで帰ってたし。…あー、電車も混むんだよねー。」
咲葉さんは思い出したように呟く。
「そうなの?帰りの電車って混むの?」
「うん。金曜日は特にね。」
そうなんだ…。帰りの電車が混むなんて、完全にノーマークだった。
「じゃ、ここまで迎えに来る。」
電車の中で、咲葉さんが変な人に触られたら困る。…いや、すごく嫌だ。
俺はこんなに我慢しているのに。
「大丈夫だよー。それに、ここまで一人で来るの?そっちのほうが心配だよ。」
『夜は変な人が多いから』
咲葉さんは笑って言うけど、心の声に不安が募る。
咲葉さんが変な人に会ったら、どうするんだよ…。
なのに、咲葉さんは笑って
「遅刻しちゃうから行くね。…明日楽しみにしてる。」
さっさと会社へ行ってしまった。
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