美男子の恋事情!

あいつ空気読めよ!なんて心の中で悪態を吐きつつ、気持ちが焦る。だけど。



「……集合だって…じゃあ私、もう行くね」


「あ、ちょっと……っ!」



俺の言葉も聞かず、春川さんは、バイバイ、と背を向けて行ってしまった。


その表情に影を落として。




違う。迷惑なんかじゃない。


そんなこと思うわけがない。



凄く嬉しかった。


君が観に来てくれたって気付いた時、心臓がおかしくなるぐらい嬉しかったんだ。


君が、君のことが…好きだから。



春川さんの影が落ちた泣きそうな表情を思い出して、胸の奥がズクンと痛む。


くそっ‼︎なんで俺はいつもこうなんだ。


何が硬派系イケメンだよ……


ただの情けない男じゃねぇか。


いざという時に何も言えなくて、顔も見れなくて……ホント、だせぇ。





どんどん小さくなる彼女の背中を見つめながら唇を噛み締める。


目を細め真っ白な頬を染めて笑う君を好きになった。



俺は君にそんな暗い顔をさせたいわけじゃない。


華のようなふんわりと柔らかい笑顔が、君には似合う。


だから、笑って。


俺の前で。俺だけの前でーーー。





< 10 / 145 >

この作品をシェア

pagetop