初恋ナミダ。

*背を向けて



「よっ! おはよ!」


朝、玄関扉を開けて外に出た瞬間に聞こえたのは、元気な悠馬の声だ。

悠馬はこの前、彼氏候補宣言してからというもの……


「乗ってくだろ?」


こうして迎えに来ては、自転車に相乗りさせてくれている。

下校の時に一緒に帰ることはちょくちょくあった。

でも、朝の登校時では、たまたま会った時だけ乗せてもらう程度。

だから、これが悠馬なりのアピールなのは感じるわけで。


「てか、お前髪切ったんだな」

「あ、さすが悠馬。気付いた?」

「まあなー」


些細な変化も見逃さない。

こうして、親でも気付かなかったことを気付いてくれるのはめずらしいこではないんだけど……


「遥のことならわかっちゃうからなー、俺」


こんな言葉を付け加えられるのはなかったこと。

だから、幼なじみの今までにない言動は、私をちょっと戸惑わせる。

そして、こんな風に戸惑う時に必ず思い浮かぶのは……椎名先生の姿だ。

これは、悠馬に問われて椎名先生の事を頭の中に浮かべてからずっとだった。


< 95 / 263 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop