ほたるの初恋、消えた記憶
色々な事を思い出した。


忘れてしまった事もあるけど、美幸と健人と過ごした事は覚えてるし、家族の事も忘れてはいないはずだ。


祐吾の事は全く思い出せない。


「もしかして、俺の事を気にしてるなら大丈夫だからね。健人から聞いて納得出来たから。」


最初、祐吾はかなり怒れたらしい。


10年前突然東京へ帰ってしまったから仕方ないと思っても、ほたるに初めましてと言われた時のショックは大きかったと言った。


本当にごめんなさい。


10年前の事は祐吾だけでなくて、家族の事も美幸と健人といた事も思い出せていないのだ。


うっすらと覚えている事もあるけど、はっきりとしない。


思い出そうとすると頭が痛くなるから、心療内科の先生に無理に思い出そうとすることは駄目だと言われた。


低学年の頃はあまり学校へ通えてなかったから、民宿の仕事を手伝っていたと思う。


両親も祖父母もないも言わないし、聞いて来なかった。


学校へ行けないことを誰も責めなかったし、自由にさせてもらえた事が嬉しい。


祐吾が頭を優しくなぜる。


「痛みは大丈夫。」


痛くないよと言うと良かったと笑う。


この笑顔何となく覚えてる気がする。


祐吾はいつも笑っていたと思う。


10年前祐吾とはどんな時間を過ごしていたのだろうか。





















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