二百文字小説【小さな玉手箱】
《3.羽ばたき 》

 今年もツバメが我が家の軒下に巣をつくった。

 かいがいしく餌を運ぶ親鳥にねだるヒナが可愛らしい。

 しばらく観察していると、親鳥の足に識別札のようなものが見えた。

「巣から落ちていたあの子、無事に親鳥になって戻ってきたんだね」

 隣にきた姉が微笑みながら言う。

 訊くと去年、ヒナが落ちているのを見つけて巣に戻したという。

 この先、生きていけるのか心配で目印を付けたというのだ。

 力強く羽ばたく親鳥に命の力強さを教わった。
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