初恋ウエディング~交際0ヵ月の求愛~
お座敷には既に伊集院元総理夫妻とお父様が座って居た。

「父上、母上お久しぶりです」
「久し振りだな。元気そうだな。紡」
伊集院元総理の低く心地の良いバリトンの声が響く。
ロマンスグレーの髪を後ろに撫でたようにセットし、清潔感を醸し出していた。
紡さんと似て普通の人には無いオーラが感じられる。

「何だ?紡さんと一緒だったのか?眞彩」

「はい・・・」

お父様の焦りの表情が安堵に変わった。

私達は共に腰を下ろす。

春らしさが溢れる懐石を頂いた。

「父上、母上…彼女には最初に言っておいたよ。俺は結婚する気が無いと」

「紡…」

伊集院元総理夫人は困ったように紡さんの名前を呼んだ。

「彼女には柚希の方が似合うと思う」

「柚希?柚希って…相馬柚希か??」

「そうです。桐生社長」

「しかし…柚希君も結婚する気は…まぁ―眞彩は相馬社長のお世話になってるしな…眞彩はどう思ってる?柚希君のコト・・・」

「あ…素敵な人です」

この縁談は破談の色が濃かった。

私は安心して胸を撫で下ろし、紡さんに感謝した。





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