いきなりプロポーズ!?

 私は寝たフリをしてそのまま達哉の胸にもたれていた。

 しばらくしてバスはキャビン前に到着した。達哉に起こされ、目が覚めたフリをした。バスを降りると冷たい空気が肌を刺す。今夜は特に冷え込んでいる。マスクを上げるのを忘れていた。頬がチクチクと痛い、眉と鼻のあたりはピリピリした。先に降りた達哉が立ち止まって上を向いた。奴の隣に並んで私も同じく空を見上げた。出発前に見たときと同じ、変わらずの曇天。でもホテル上空よりは雲は薄めのようだ。星がいくつか見えていたから。

 オーロラが出るまでキャビンで待機することにした。この天候で今日の観測を諦めた人たちもいたようで、中にいたのは20人程度だった。そこには例の女性3人グループもいたし、鈴木夫妻の姿もあった。夫妻は二人仲良くならんでベンチに座り、話をしている。きっとあのふたりも若いころに出会って互いに惹かれて恋をして、交際期間を経て結婚したに違いない。あんな素敵な夫婦になるにはまず恋人を作って付き合って求婚されなければならないのだ。なんか私には一生無理な気さえした。

 達哉は他の男性ツアー客につかまって、テーブルの向こう側でサッカー談議をしている。私はひとり、ハーブティーを飲みながらぼんやりとストーブの炎を見ていた。時折、達哉を見るけど胸が苦しくなってすぐに目を逸らせてしまう。

 キャビン入口のドアがバンと開いた。皆が驚いてそちらも見る。いたのは同じく青いレンタル防寒着を着た男性だった。顔の下半分を覆っていたマスクを指で下ろし、目をまあるくして、口をあわあわとさせていた。驚いているのは一目瞭然。何事かと緊張が走る。静まり返る室内。シーンと静まり返る。


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