いきなりプロポーズ!?
§11 カシュカシュ……かくれんぼ?!
 翌朝。朝といってもまだ外はまっくらだ。寝ぼけた頭で荷物をまとめる。あくびを連発して達哉も荷物をまとめている。来るときにしょっていたバックパック、男は身軽でいい。それに達哉は海外慣れしているから、携行品も必要最小限だ。


「あ。マスク」


 達哉が貸してくれたマスク。この場で返したいけど洗濯もしていない。くんくんと匂いをかぐと自分のリップの匂いと達哉のマウスウォッシュの匂いが入り混じる。




「それ、やるよ」
「でも。洗濯してから返す」
「いいよ。また会うのも面倒だろ。なら持ってろよ」
「……うん。ありがと」


 私は気づかれないように肩を落としてそのマスクをピンクのキャリーケースに詰めた。達哉はもう私には会いたくないのか、昨夜(といってもつい2時間前)の出来事に期待してしまった私がバカなのか。もしアレを持っていたら一晩だけのお楽しみに抱いたというのか。

 最後に部屋をひとまわり眺めた。キャリーケースを持ちながら寝室を出る。振り返りベッドを眺めた。達哉のベッドカバーはぐちゃぐちゃに乱れている。私に腕枕をして優しく愛撫してくれた場所。私はその小さな思い出を断ち切るように前を向いた。リビング、そしてミニカウンター。ここで達哉はいきなりプロポーズの言葉をささやいた。それは私に向けられたものではなく舞さんに向けて放たれた言葉だったけど。そして二人で部屋を出た。サヨナラ、と心の中でつぶやいてから扉を閉めた。


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