いきなりプロポーズ!?
§5 いきなりプロポーズ? いきなりキス!

 部屋に戻ると買い込んだものをふたりで仕分けした。保冷の必要な生ものは備え付けの冷蔵庫に押し込み、常温で大丈夫な菓子類はミニキッチンの隅に置いた。そうしてから達哉はシンクの引き出しからワインオープナーを取り出して早速ロゼワインを開けた。食器棚からグラスを出して注ぐ。ピンクの液体で満たされた綺麗なグラスはぶっきらぼうな達哉には不釣り合いだ。ギャップ萌えなんて言葉を飛び越えているほどの不自然さ。達哉は買って来たナッツをつまみにロゼワインを飲む。一緒にどう?、と誘われたけど、達哉はなんとなく不機嫌で、一緒に飲むのも気が引けて断った。どことなく掴みどころのない男。ちょっと優しい部分もあるのは見えてきたけど。

 ミニキッチンの向かいにはカウンター、4つあるスツールのうち、一番奥のそれに達哉は腰掛けている。


「サラダ、食べる? 食べないなら冷蔵庫にしまうけど」
「食う。適当に分けて」


 キッチンに備え付けられていた白いプレートを取り出し、シンクの横で取り分ける。トッピングのチーズもハムも豪快に乗せられていてレタスはつぶれ気味だった。山盛りサラダの脇にフォークも添えてカウンターに出す。スツールを二つ空けて私も腰掛けた。

 横でワインを口にする達哉は言葉もなく、もくもくとワインを飲んでいる。美味いとか不味いとか感想もなく、まるで水を飲むようにさらさらと喉に流し込む。味わってはいないだろう、ただ、儀式のように飲んでいる。


「ワイン、好きなの?」
「好きだよ。どうしてそんなこと聞く?」
「なんか美味しそうじゃないから。ハズレだった?」
「ロゼ自体好きじゃないし」



< 55 / 144 >

この作品をシェア

pagetop