緑と石の物語
「ところで、その後、調子はどうなのだ?」

「石との会話のことですか…?
まだ、これといった変化は感じられません。
何か感じそうだ…と思うことはあるのですが…はっきりと伝わってくることはないのです。」

「…そうか…まぁ、焦ることもあるまい。
まだ魔石の手掛りさえ掴んではいないのだからな。
しかし、私の時はどうしてそんなに意志疎通がうまくいったのだろうな?」

「そ、それは…レヴさんを助けたい一心で、必死だったからだと思いますよ。
切羽詰まった状況になると、思わぬ力が発揮されることがよくありますから…」

「それはそうだな。
あの時は、本当に世話になった…
命を救われたのだからな…」

「またそんなことを…
その前に、私はレヴさんにあの森から救い出されてるじゃないですか。」

「それは…」

「あぁ~、あんたら、またその話かい!
よく飽きないもんだね。」

突然部屋に入ってきたサリーが呆れたような声でそう言った。



「なんだ、まだ起きていたのか。」

「ねぇ、そろそろ、暗き森の近くだろ?」

「よくわかったな。」

「あたしはレヴ程、方向音痴じゃないからね。」

サリーの言葉に、レヴの眉間には深い皺が刻まれた。



「暗き森にはもちろん入らないんだろ?」

「あぁ、そのつもりだ。」

「行きにも暗き森を通って来たなんて言うんじゃないよ。」

「もちろんだ。」

「そのことを伝えに来たんだ。
ジネットの手前ってもんがあるからね。
…あぁ…もう少しでピエールにも会えるんだなぁ…!
ピエール…元気にしてるかな?!」

「……あぁ……
君とはピエールさんの紹介で会ったんだったな。」

「覚えてた?
…なんか、もうずいぶん昔のことみたいな気がするよ。
今も変だけどさ、あの時のレヴはもっと偏屈だったよなぁ…」

「それはこちらのセリフだ。
あの時に比べたら、君もずいぶんマシになってるぞ。
酒も抜けて健康になったのではないか?」

「よけいなお世話さ!
…じゃ、あたし、もう寝るから。おやすみ!」

言いたいことだけ言うと、そそくさとサリーは部屋を出て行った。
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