どこまでもパラレル
親戚同士昔話をしたり、もう関係のない話で盛り上がっている教え子の輪がいくつもできているのを冷めた目で見ていた。
いい先生だったのに、死んでしまったか。
いつだったか
「おまえには女難の相がある」
と言われたことがあった。
先生の専門は人相学でもなんでもなかったが、不思議と真実味のある言葉だった。
若かった俺は、むしろ何か嬉しいことを言われたような気がしたのを覚えている。
女というものがわかっていなかったのだ。
いや、今でもわからない。
だから、女難、なのだ。
コップに注がれたままぬるくなってしまったビールを一口にあおり、席をたった。
智子が不思議そうな顔をして見上げてくる。
「もう失礼する、けど」
「けど?」
-一緒に出るか?
とは言えなかった。
俺の口から続きが出てくるのをあきらめ、智子も立ち上がる。
「私もおいとましよう」
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