Chat Noir -バイオハザー度Max-
今日はあったかかったからな。
日向ぼっこでもしてたのか?
浩一の“男”の香りじゃなくて、それは無邪気な“少年”の香りだった。
だけど浩一の香りよりも、何故か黒猫の香りにドキリとしてしまう私。
どーしたって言うんだろ…
私と目が合うと、黒猫はまたもふいと視線を逸らし、私の手からようやく手を離した。
「大人ぶって説教垂れてくんなよ」
ぶっきらぼうに言って今度は視線どころか顔ごと逸らす。
何なのよ。手を掴んで歩き出したかと思ったら、急に不機嫌。
…いや、もともと不機嫌そうではあったけど。
やっぱり、可愛くない黒猫。
「あのねぇ、君は未成年でしょ。私はあんたの面倒見るように言われてるから、会っちゃたら知らんぷりできないでしょうが」
大人ぶってる…って言うかもしれないけど、私は黒猫の五歳年上でもう22なのよ。
ぶってるじゃなくて、大人なの。
私が説教じみて腕を組むと、黒猫は益々つんと顔を背けてポケットに手を突っ込みゆっくりと歩き出す。
聞こうよ、人の話を。
それでもゆっくり、ゆっくりと歩く黒猫の背中を見ながら、私も何故か、ゆっくりゆっくりと黒猫の歩調に合わせて追いかけた。
「何なの、あんた。昨日までは俺に無関心そうだったのに」
黒猫が呟く。
昨日までは―――そうね、無関心だったわよ。
別に黒猫がどこで何をしてようが、おうちを脱走して野良やってようが、関心なんてなかった。
あんたが私を
変えたんじゃない。
黒猫がゆっくりと再び振り返る。
柔軟剤とお日さまの香りを漂わせて。無邪気な黒猫の香りを漂わせて。
だけど黒猫は
やっぱり黒ネコだった。
「俺は、昨日はああ言ったけど飼い主と飼い猫なんて望んでない。
カテキョと生徒って関係も」
ズキリ……
心臓が鳴る。
なによ、年上女をからかっただけ?
黒猫のくせに。