EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【フェオドール編】

「ふ…りん…?」

単語を理解するのに少し時間がかかる。

小鳥は動揺した、泣きそうな瞳でオーレリアンを見つめた。

「本、当…?」

「……あの女は人妻だって、前に言ってた。兄様が」

今にもくしゃりと歪みそうな表情をしている小鳥に、オーレリアンは同情する。

「そんな落ち込むなよ…。あの女だけじゃないんだ。兄様はちょくちょく違う女と関係を持ってる。どうせ今日も奥に引っ込むだろうし」

「引っ込む…?」

「この店、ラブホも兼ねてるから」

「ええ!?」

「しっ!大声出すな馬鹿!兄様の耳に入る!」

「ご、ごめんなさい…」

チラリとテーブル席を確認する。

フェオドールはこちらに背中を向けたまま。

どうやら気づかれてはいないようだ。

オーレリアンと一緒に小鳥も安堵する。

「……これは僕の勘だけどさ。多分、兄様は甘える相手が欲しいだけなんだと思う」

小鳥はゆっくりと隣のオーレリアンに視線を戻した。

「早く母様を亡くして…昔から兄様は甘えられる相手が少なかったんだ。僕やルカやカロンはそんな兄様に甘えてた。僕達の面倒を見て、支えになってくれる兄様に…」

そう薄々感づいていて、オーレリアンは今まで何もできなかった。

末っ子という立場では、兄の心の支えになるには不十分で――。

何もしてあげられなかった。

「きっと、兄様は今も…支えが欲しいだけなんだと思う。だから、女を誑かして遊んでるわけじゃない」

小鳥にわかって欲しくて熱を込めて話す。

聞きながら、小鳥はフェオドールと女性が席を立つのを見た。

オーレリアンが言った通り、店の奥にある個室へ消えていくのを、見た。










< 50 / 207 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop