EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【ルカ編】

助けたから懐かれた。

そんな単純な話ではない気がして小鳥は口をつぐむ。


(それに、私があの時ルカくんを止めたのは、ヴォルフさんのためじゃないし……ルカくんのためでも……ない)


一番は、自分のためだった。

誰かを殴るルカを見たくない、というのも本心だが、それ以上に、自分が父親から受けた恐怖を思い出してしまうから。

ヴォルフ程酷く殴られたことはなかったが、ボロボロになって倒れているヴォルフが、小さな頃の自分と重なって見えて、小鳥は恐怖した。


(でもルカくんは、お父さんとは違う。八つ当たりみたいに、理由もなく誰かを殴るなんてこと、しない……!)


ヴォルフにだって、結局のところ小鳥を噛んだから怒っただけだ。

怒りの表現が過激ではあったが。

「……小鳥、おはよう」

不意にルカが挨拶をしてきた。

「おはよう、ルカくん」

挨拶を返しながらルカと目を合わせる。

しかし、ルカは小鳥と目が合うと、気まずげにふいと視線をそらしてしまった。


(ルカくん……?)


いつもならルカが積極的に話し掛けてくるのだが、今日は「じゃあね」と言って逃げるように小鳥から離れていく。

とても素っ気ない。


(え……私、避けられた……?)


今度はルカの態度に呆然とする小鳥だった。



< 172 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop