EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【カロン編】
12


†††


 人通りが多く、楽しげな声が聞こえる華やかなネオン街。

しかし、ビルとビルの隙間にある薄暗い路地を行けば、そこは華やかさとは掛け離れた吹き溜まりだ。

その裏道を千恵はトボトボ歩いていた。

手や服には、ところどころ真新しい血がついている。

蜜莉の血だ。


「……みつ、り…」


小さな声で大好きな、けれど憎らしい名前を呟く。


(私、ね……大好きだったんだよ…?あなたのこと…)


大好きだった。

彼も自分を好いてくれているのだと、ずっと信じていた。


(だって、あなたはとっても優しかったから…)


それがペットに対する愛情でも構わなかった。

どんな形でも、愛してくれるなら。

蜜莉の傍に、いられるなら――。


「なのに……どうして……?」


涙が溢れそうになって、千恵は上を向いた。

泣きたくなかった。

涙なんか、とうの昔に涸れ果てたはずだ。

そう――捨てられた、あの時に。



――蜜莉がね、もういらないって



突然、闇市場に連れて来られて、彼の弟からそう聞いた。



――飽きちゃったから、違うペットを飼うんだって。もうキミは用済みなんだよ



――うそ……うそだ!!ミッつんは!?ミッつんに会わせて!!



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