御曹司さまの言いなりなんてっ!

「道徳がどうのこうのと言っても、結局それは本人同士の自覚の問題だろう?」

 専務が上から目線で私と部長を見比べながら、からかうような口調で言った。


「それとも、なにかなあ? 君達はそういう、不道徳な行為をする予定でもあるのかなあ?」

「ありませんよそんなもの!」

「ありませんね。まったく」


 噛み付くように答えた私の声に被さるように、冷めた口調で部長も答える。

 ……………。

 そういう風にキッパリ否定されてしまうと、それはそれで腹が立つのはなぜだろう。


「なら問題はないだろう。では、お待たせしましたお祖父様。行きましょう」

「直哉、成実ちゃん、それじゃまた明日」


 勝手に議論に終止符を打った専務と会長は車に乗り込み、あっさりこの場から去っていく。

 私は置いてきぼりにされた小学生のような心境で、遠ざかる車を見送っていた。

 あぁ……お願い待って。行かないでぇぇ……。


「おい」


 完全に車が見えなくなった途端、待ち構えたように背後から聞こえる不機嫌そうな男の声。

 その妙に低音域な声に私はビクッと身を震わせ、緊張した。

 で、できることなら、このまま振り向きたくない……。

 
「おい無視するな。こっち向けよ」

「…………」


 さすがにいつまでも背中を向けているわけにいかず、私は恐る恐る部長の方に振り向いた。

 はたしてそこには、腕を組みながら威圧するように私を見ているイケメンが。
< 134 / 254 >

この作品をシェア

pagetop