御曹司さまの言いなりなんてっ!
「道徳がどうのこうのと言っても、結局それは本人同士の自覚の問題だろう?」
専務が上から目線で私と部長を見比べながら、からかうような口調で言った。
「それとも、なにかなあ? 君達はそういう、不道徳な行為をする予定でもあるのかなあ?」
「ありませんよそんなもの!」
「ありませんね。まったく」
噛み付くように答えた私の声に被さるように、冷めた口調で部長も答える。
……………。
そういう風にキッパリ否定されてしまうと、それはそれで腹が立つのはなぜだろう。
「なら問題はないだろう。では、お待たせしましたお祖父様。行きましょう」
「直哉、成実ちゃん、それじゃまた明日」
勝手に議論に終止符を打った専務と会長は車に乗り込み、あっさりこの場から去っていく。
私は置いてきぼりにされた小学生のような心境で、遠ざかる車を見送っていた。
あぁ……お願い待って。行かないでぇぇ……。
「おい」
完全に車が見えなくなった途端、待ち構えたように背後から聞こえる不機嫌そうな男の声。
その妙に低音域な声に私はビクッと身を震わせ、緊張した。
で、できることなら、このまま振り向きたくない……。
「おい無視するな。こっち向けよ」
「…………」
さすがにいつまでも背中を向けているわけにいかず、私は恐る恐る部長の方に振り向いた。
はたしてそこには、腕を組みながら威圧するように私を見ているイケメンが。