御曹司さまの言いなりなんてっ!

 眩しく厳しい日光のせいで眉間に皺が寄り、ついつい人相が悪くなる。

 国道を行き来する車のエンジン音が、騒々しく耳に響いて頭痛がする。

 部活疲れで体は酷くダルいし、暑さで呼吸が速まるせいか、さっきから心臓までドクドク鳴っているし。


 もう、たまらない。今日はいつもと違う道を通って帰ろう。

 ちょっと遠回りになるけど、狭い住宅街を通っていけば日陰が多いだろうし、少しは涼しいはず。


 そう思ったあたしは方向転換して、人の群れの賑わいからひとり離れた。

 国道沿いから少し横へ逸れれば、そこは昔からの古い閑静な住宅街。

 ここの住人はお年寄りが多いせいもあってか、こんな灼熱な時間帯に出歩いている人は誰もいなかった。

 人っ子ひとりいない静まり返った狭い道を、纏わり付くような熱気に包まれながら、あたしはフラフラと歩いた。


 あぁ喉が渇いた。今日はちょっと水分補給が足りなかったかな。

 早く帰って、エアコンが効いた家の中でキンキンに冷えたジュースを思い切りゴクゴクと……。


 ……フラリ


(あれ?)
 

 突然、あたしの体が揺れを感じた。

 地震かと思ったけれど、違う。

 これって地面が揺れているんじゃなくて、あたしの体が揺れてる……?

 と思った次の瞬間、平衡感覚を失ったあたしは、道路にバタリと倒れてしまった。

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