ねがい
向井さんの声が聞こえて、身体がゆらゆらと揺れた感覚は覚えている。


冷えた身体が、ある時から温かくなり初めて……。


次に気付いた時には、私はベッドの上にいた。


部屋の中は真っ暗で、今が何時なのかも分からない。


枕元を見ると、携帯電話の端がチカチカと緑の光を放っている。


あれだけずぶ濡れになったのに……初めて防水の恩恵を受けた気がするよ。


でも……部屋の中がグルグル回る。


メールがあったのか、着信があったのかは分からないけど、酷い頭痛とめまいに、確認する気にならない。


「南部君と向井さんが……送ってくれたのかな」


そうだとしたら、私は二人に会わせる顔がない。


私に二回目の儀式をさせないように、二人がかりで協力してくれてたっていうのに。


隙をついて抜け出した私を、見捨てこそすれ、助けてくれたんだから。


目を覚まして間がないけど、幽霊も現れない。


大切な物を失ったから、もう付きまとう必要もなくなったのかな?


だとしたら、私は何を失ったのかな。


彩乃みたいに、身体が溶けてるってわけじゃなさそうだし。


一体何を失ってしまったのかが気になっていたけど。


あれこれと考えているうちに、気を失うように、再び眠りに就いた。
< 175 / 265 >

この作品をシェア

pagetop