俺のSPはくの一女子高校生

「楓、勝ったよ!」


どうやら鬼ごっこに勝ったらしい。後ろの方で負けて悔しそうに顔を歪める鬼龍メンバーがいる。


「おめでとう。でも、顔、汚れてるよ」


校庭を走り回ったせいか、顔や制服に砂がついている。朔が自分で顔の砂を払おうとするけど、全く違うところを触っていて、もどかしくなってくる。

わたしはポケットからピンクのハンカチを取り出すと、朔の頬についた砂を拭いた。

すると朔は嬉しそうに白い歯を見せてニシシッと笑う。


「ちょっとはしゃぎすぎたかな」

「はしゃぎすぎ。それに、何度かヒヤヒヤした」

「ごめんごめん」


砂を払いながら、頭の中では皇さんの言葉が駆け巡っていた。

もし、朔に彼女ができたら……。

さっきみたいに犬のように駆け寄って行くのはわたしではない別の誰か。こうやってハンカチで朔を拭いたりもできなくなる。
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