すでに恋は始まっていた
「遅くなって悪い!…ん?お前らどうした?」


「なんでもありません」


謝っただけじゃ怒りがおさまらない泉は、先生もびっくりするほどの怖い態度をとった。


「夢咲。なにかあったのか?」


(私に聞いてきたということは、先生達の間でもすでに情報は回っているのか…)


私もかなり頭にきていたけど、これ以上先生を困らせるわけにはいかないから


「いえ、大丈夫です。みんな!授業始まるよ!」


と、明るく言って見せた。


私の言葉でみんなが席につく。


(レトワールの力ってすごい…)


授業が終わると、葉月はなにもなかったかのように元気だった。


「くよくよしても仕方がない!」と自分に言い聞かせているみたい。


泉も、まだ怒っていたけど葉月が悲しむと思ってその話題は避けていた。


夜に電話で愚痴を言う泉をなだめるのは大変だったけど…。

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