すでに恋は始まっていた
「えっとね、改めて借り物競争の時のお礼を言いたくて。あの時は本当に助かったの。ありがとう!」


「いえいえ、俺の方こそ困ってましたから」


そう言って頭を下げる。


「え?」


(樹君は私を助けてくれたよね?樹君も助かったってどういうこと?)


私が理解できていないのがわかったのか、樹君が説明してくれた。


「だって、交換してもらわなかったらレトワールの方にお願いしなくちゃいけないんですよ?俺にそんな勇気なくて…」


樹君は困ったように笑った。


(そういうことか)


「なるほどね!じゃあお互い助かったってことか!」


「はい!だから俺こそお礼言わないといけないんですよ。ありがとうございました」


「いえいえ」

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