すでに恋は始まっていた
「疾斗、ごめんね?勝手に誘っちゃって」


私が話しかけるとすねていた顔をやめた。


「別に、日菜には怒ってねぇよ」


そう言って優しい顔で頭をポンポンしてくれる。


(…これ反則でしょ)


顔が赤くなるのがわかった。


わかっているけど、そんなことどうしようもないからますます赤くなる一方。


「日菜?照れてるのか?」


ニヤニヤしながら聞いてくる。


(こいつ〜!絶対わかってやってるでしょ!)


「う、うるさい!」


私は少し悔しくなって、疾斗の顔も赤くしてやろうと疾斗に抱きついた。


案の定、疾斗の顔もみるみる赤くなって…


「なに?疾斗照れてるの?」


さっきの言葉をそのまま返してやった。


「いや、お前それはずるいだろ!」


「疾斗のだって反則でしょ!」


(いや、でもよく考えれば…私かなり思い切ったことしたかも…)


今更自分のしたことが恥ずかしくなってきた。


(でも…疾斗笑ってるし、怒ってないみたいだからいいかな)


カラオケに着いた頃には、ちっとも不機嫌じゃなくてみんなも私も一安心した。

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