すでに恋は始まっていた
「これから幸せがいっぱい訪れるといいね!じゃあバイバイ!」


そう言って立ち去ろうとする男の子。


私が少し気まずいような顔をしたから、それを見て悪いことを言ったと思ったのかもしれない。


でも私は別にどこかへ行って欲しいわけじゃないし、むしろいろいろ話したい。


「待って!」


反射的に男の子の右腕を掴む。


一瞬動きが止まったけど、優しい笑顔で振り返ってくれた。


「なに?」


「あの…あのね、これ…あげる!」


私は服にある小さな右ポケットをあさる。


(確かここに入れたはず…)


私はポケットから見つけたうさぎのキーホルダーを取り出して、差し出した。


それはまだ新品で、この間ママが買ってくれたキーホルダー。


とっても大事な物。


だけど…ううん、だからこそあげたいと思った。


なんでだろうね。


「…くれるの?」


「うん!お花のお礼!」


「ありがとう。大事にするね」


男の子には可愛すぎたかな?っと思ったけど、嬉しそうに受け取ってくれて安心した。


キーホルダーを大事そうにポケットへ入れると、私に手を振って走って行く。


「待って!名前がまだ……行っちゃった…あの子、なんで聞こえなかったんだろう…」

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