すでに恋は始まっていた
私が立ち尽くしていると、レトワールのみんなが私の前に来た。


「日菜、退院おめでとう。今日は理事長に休校の日をもらったから、全校生徒でお祝いしたいんだ。日菜の誕生日も含めてな」


今日は私の誕生日。


忘れていたわけじゃないけど、私の誕生日を教えたことなんてなかったから、こんなお祝いをしてくれるとは思わなかった。


(知っててくれたんだ…)


「疾斗…これ、私の為に…?」


もちろん私の為だってわかっているけど、正直信じられない。


だって、こんなにたくさんの人にお祝いされたのは初めて。


こんなに盛大にお祝いされたのは初めて。


(まずい…また泣いちゃいそう…)


さすがに全校生徒の前で泣き顔は見せたくない。


必死に涙をこらえる。


「もっちろん!日菜ちゃんの為だよ?」


光が私を引っ張って、全校生徒の前に立たせる。


「みんなで準備するの大変だったんだから」


《別に嫌じゃないけど》


「みんなー!せーのっ!」


「「「「「日菜華さん、ご退院・お誕生日おめでとうございます!」」」」」


圭介の合図で、全校生徒が私にお祝いの言葉を言ってくれた。


(もう…むり)


私はこらえていた涙を一気に流した。


「…ぅ…ありがとぅ…あ、たし…ホントに、幸せ。…ホントに、ありがとう!」


(私、今…人生で1番幸せかもしれない…)

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