すでに恋は始まっていた
いつもと変わらない裏庭。


あの事件があったなんて、全く感じさせないくらい綺麗に片付けられている。


「疾斗、どうしたの?」


すると、疾斗は少しだけ恥ずかしそうな顔をした。


「あの…さ、俺が前に告白しただろ?」


よく覚えてる。


印象的だったからね。


「うん」


「その時は振られたけど…もう1度、真剣に考えてくれないか?」


私は驚いて声も出なかった。


だって私が言いたかったこと、疾斗が先に言っちゃったんだもん。


私が返事に時間を取りすぎて、疾斗は不安そうな顔をし始めた。


「ダメ…か?」


そんなわけない。


だって疾斗は、私の初恋の人。


何度も私を助けてくれた人。


私の幸せを願ってくれた人。


答えなんて決まってる。


私は疾斗に微笑んだ。


「…疾斗はさ、私達が初めて会った時のこと覚えてる?」


(覚えてるわけないか)


急に話を変えられて、疾斗は意味がわかっていないみたい。


不思議そうな顔をした。


「初めて会ったって…俺が告白した時のことだろ?」

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