すでに恋は始まっていた
「うん…乙川 葉月です」


自信なさげに自己紹介。


そっちが話しかけてきたのに全く目を合わせようとしない。


《どうしよう…ちょっと怖いよ…》


(じゃあ話しかけてくるなよ)


「何の用?怖がってないで早く言ってくれない?」


休み時間の優雅な睡眠を邪魔された私は結構不機嫌。


私の言葉を聞いた乙川は心底びっくりしていた。


《ぐ…偶然だよね。心が読めるわけ…ないもの》


「あの…あのね、夢咲さんはこれで良かったのかな?って…思って…」


《疾斗様と仲直りした方がいいんじゃ…》


(私、こういうおどおどしたやつ嫌いなんだよね〜)


「は?私がどうしようとあんたには関係ないでしょ」


「そ…そうなんだけど…でも…最近笑わないから」


うつむきながら、若干涙声で話す。


私の冷たい態度が、かなり効いているみたい。

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