思いは記念日にのせて

第二十四話

 
 貴文さんが出張に行っている間はアンケートボックスに画像や脅迫めいた文章が入っていることはなかった。
 それは正直ありがたかったし、片山課長も安堵していた。
 また西園寺さんと貴文さんが一緒の画像なんか入っていたら、今度こそ誤魔化しようがない。
 貴文さんをよく思っている片山課長を失望させてしまうかもしれないのが一番怖くて、それだけは絶対に避けたかったから。


**


 季節はすっかり夏。
 毎日蝉の鳴き声やうだるような暑さ、差すように照りつけられる日差しにうんざりする頃、約一ヶ月の出張期間を終えて貴文さんが帰国した。
 少しだけ痩せたようにも見えたけど、意外と日本でよりも規則正しい生活を送っていたと笑顔で話してくれた。
 そう言われれば日本にいた時よりも疲れた表情をしていないように見えるし、顔色もいい。
 それというのもお目当ての作家さんに会えなかったのが一番の原因だったと苦笑いで教えてくれた。

「ちょうど出国した後だったみたいで、会えていたら地獄のような忙しさだったと思うけどね。だけどアメリカ支社の社員と実りある話し合いができたし、いろいろ刺激になったよ」

 会いに行った作家先生に会えなかったのに出張予定期間が変更されないなんて不思議な感じだけど、なにはともあれ貴文さんが元気そうでよかった。
 ずっと食べられなかった日本料理を楽しみたいとのことで居酒屋へ行くことになった。
 そろそろ研修メンバーにわたし達のことを話そうと貴文さんがみんなをメールで呼び寄せ、ひさしぶりに五人で集まることになった。
< 103 / 213 >

この作品をシェア

pagetop