思いは記念日にのせて
11.動き出す思い

第四十話


「ハイ、千晴!」

 うちの前にアメリーが立っていた。
 片手に紙袋、もう片方の手に大きめのキャリーバッグを持っている。

「どこかへ行くの?」
「ええ、アメリカへ」
「えっ、ずいぶん急な話だね。またすぐ戻ってくるんでしょ?」
「うーん、今度はしばらく戻らないかナ? これ、預かったカラ」
「そうなの?」

 アメリーがいなくなる。
 話してみれば気さくな人で美人を鼻にもかけず仲良くしてくれた。
 そんなアメリーがいなくなってしまうなんて寂しくなってしまうな。
 紙袋を手渡され、受け取ると思ったよりもずしりと重かった。

「まだ恋人の……アルに会わせてもらってないのに」
「そうネ。日本に来るって言ってたけど向こうの仕事都合つかなくてネ。また会えるヨ」

 アメリーがぎゅっとわたしを抱き寄せる。
 ふわりと石鹸のような優しい香りが心地よかった。
 ちゅっと頬に口づけされてびっくりしたけどうれしかった。
 悲しくて涙が滲んでしまい、それをアメリーが笑いながら掌で拭ってくれる。

「大好きヨ、千晴。またネ」
「わたしも……っ、絶対よ。アメリー」

 ばちんとウィンクをするアメリーは本当に魅力的だった。
 アメリーの背中が見えなくなるまでわたしは手を振り続けた。
< 162 / 213 >

この作品をシェア

pagetop